四書の中の『大学』とは

「大学」は入徳の書として曽子(そうし)によって著されたものであり、四書(「論語」「大学」「中庸」「孟子」)五経(「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」)の最初に学ぶべきものとされている。
儒教の根本思想である「修(しゅう)己(こ)治人(ちしん)」とは、自分をより高い人間性を持つことに導いてゆき、それによって人にもより良い影響を与えて正しい人の道へ進ませることができるということをいう。

大学の三綱領(『大学』における大切な「三つの柱」)
(一) 明徳(めいとく)を明らかにする
(二) 民に親しむにあり
(三) 至善に止まるに在り

「八条目」(三綱領を実践してゆく手段方法)
大学の八条目はその実践工夫である。
格物、致知、誠意、正心で自らの身を修める工夫をして斉家、治国平天下はその修まった身を世に処して進退する道を説く。
(一) 自分自身を正す(格物)
(二) 自分自身を正すことによって自ら知が到る(致(ち)知(ち))
(三) 知が到ることによって意識感情が正常になる(誠意)
(四) 意が正常になると内なる心も正しくなる(正心)
(五) 心が正しくなると身がよく修まる(修身)
(六) 身が修まると家も斉うようになる(斉家)
(七) 家が斉うと、国も治まるようになる(治国)
(八) 国も治まると天下も平らかになっていく(平天下)

大学書き下し文
大学の道は、明徳(めいとく)(天から授かった特性)を明らかにするに在(あ)り、民を新(あら)たにするに在り、 至(し)善(ぜん)(最高の善)に止(とど)まるに在り。 止まるを知って后(のち)定(さだ)まるあり、定まって后(のち)よく静かに、静かにして后(のち)よく安く、 安くして后(のち)よく慮(おもんばか)り、慮りて后(のち)能(よ)く得(う)。 物に本末有り、事に終始有り。先後(せんご)する所(ところ)を知ればすなわち道に近し。 古(いにしえ)の明徳(めいとく)を天下に明らかにせんと欲する者は、まず其の国を治む。 其の国を治めんと欲する者は、先(ま)ず其の家を斉(ととの)う。其の家を斉えんと欲する者は、まず其の身を修む。其の身を修めんと欲する者は、まず其の心を正しくす。其の心を正しくせんと欲する者は、まず其の意(こころばせ)を誠(まこと)にす。其の意(こころばせ)を誠にせんと欲する者は、まず其の知を致す。知を致すは物に格(いた)るに在り。物格って后(のち)知至る。 知至って后(のち)意(こころばせ)誠なり。 意(こころばせ)誠にして后(のち)心正し。 心正しくして后(のち)身修まる。 身修って后(のち)家斉(ととの)う。 家斉(ととの)いて后(のち)国治まる。 国治まって后(のち)天下平らかなり。 天子よりもって庶人に至るまで、壱(いつ)に是(これ)(一切)に皆身を修むるを以て本と為(な)す。 その本乱れて末(すえ)治まる者はあらず。 その厚くするところの者を薄くして、その薄くするところの者を厚きは、いまだこれあらざるなり。