成年後見制度の概要及び基本理念について

1. 成年後見制度の概要
成年後見制度は、以下の三つの個別の制度から構成されています。
(1) 法定後見制度
法定後見制度の内容は、判断能力が不十分な者に対する従来の「禁治産」、「準禁治産」を改正した「後見」、「保佐」と、新設された軽度の判断能力の低下がみられる人を対象とする「補助」の三つの類型に分けることによって、対象者の範囲を広げ本人の支援をおこなう制度です。
(2) 任意後見制度
任意後見制度の内容は、判断能力が健常な段階で、契約によって、判断能力が低下した場合における後見の範囲や後見人をあらかじめ定めておくことができる制度です。
法定後見制度が、既に本人が判断能力を欠いている場合に適用される制度であるのに対して、任意後見制度は、事前的な措置を自らが定めることを目的とした新しい制度です。いわば自らの将来は自らが事前に決めることを最大限に尊重した制度と言えます。
(3) 後見登記制度
旧制度では、禁治産、準禁治産宣告の事実は戸籍に記載され、プライバシーの侵害及び差別感を生む等の様々な問題が生じていました。しかし取引の安全性確保には取引相手が他の法律行為能力の確認が求められる一方、個人情報の保護等も十分に確保される必要があります。
後見登記制度はこれらの問題解決を図るため、制度の利用に関する情報を「登記」することを義務付けるとともに、限定された者以外はその情報の入手を不可能とする新しい制度です。

2. 成年後見制度の理念
禁治産、準禁治産制度の諸問題の解決を図るために、民法等の改正が検討され、新しい成年後見制度が平成12年4月1日よりスタートしました。
この法改正の目的は、本人の身上監護及び財産管理の達成になります。そして、その基本理念は、一つには本人の残存能力の活用による自己決定権の尊重であり、二つ目には、障害のある者も家族や地域で通常の生活を送ることができる社会を作るというノーマライゼーションの理念との調和になります。したがって、新制度では財産管理を行う場合であっても、本人の身上に配慮すべき義務(民法第858条)が課せられており、また個人の持つ損県や権利の擁護に対しても旧制度に見られなかった義務が課せられていることから、いわば人間尊重の理念が基本にあるといえます。