「山の心」を育む祈り

この世界に生きる条件。すべてがとどまることなく移り変わり、崩壊に至る定を人は免れることができないということ。あらゆる事態が複雑な関わりゆえに、自分の思い通りにはならない定を抱くということ。
それらの定を負いながら生きる私たちは、誰一人例外なく、人生の中で、様々な苦難や試練にさらされます。突然の病や事故。人間関係の不和とあつれき。思いもかけない失敗や実績の低迷。期待はずれの結果や裏切り、約束の反故。互いを傷つけずにはおかない離反や別れ。予告なく襲いかかってくる人災や天災…。私たちの前で、無数の暗転の事態が今にも口を開けようとしています。だからこそ、私たちは苦難と試練を引き受ける「山の心」を求めるのです。「山の心」とは、いかなる苦難や試練にも揺らぐことがない、不動の心の菩提心。
「山」は不動の象徴です。長い時の流れの中にあって、どれほど厳しい風雪にも、どっしりと揺らぐことなく大地に身を構え続けてきた「山」。その「山」に倣って、何ごとが起ころうと揺らぐことなく、事態を受けとめたいと願うのです。すべてをじっと黙って受けとめてきた「山の心」を想ってください。「山の心」はただ動じない重い心なのではありません。一切の痛みと呼びかけを受けとめながら、決して重心を動かさない不動の心です。
(祈りの言葉)
わたくしに「山の心」を与えてください。わたくしは現実の重さをすべて受けとめたいのです。
呼びかけの深さをすべて知りたいのです。そのために、確かな重心を備えさせてください。
いかなる苦難や試練にも決して揺らぐことがない「山」のごとき安らぎの心を育ませてください。
「祈りの道(高橋佳子著)」より