これからの法改正の動き

これからの法改正の動き

「仕事と生活の調和」に向け時間外労働の上限検討へ

長時間労働の是正は、労働の質が高まり生産性の向上につながるとともに、働く人々の健康確保や仕事と家庭の両立を可能とするものです。そのため、時間外労働の規制の強化は、働く人々が幸せな生活を送るうえで重要な課題でもあります。

●仕事と生活の調和を目指して

9月9日には、政府が提唱する「働き方改革」の一環として、第1回目の「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」が開かれました。
同検討会でテーマとされるのは、次のとおりです。

  • 36協定上の延長時間、実際の時間外労働実績などの実態や課題の把握
  • 諸外国における労働時間制度の現状と運用状況
  • 健康で仕事と生活の調和がとれた働き方を実現するための方策

このうち、焦点となっているのが36協定上の延長時間について上限を設けるか否かです。

●時間外労働は、事実上青天井

現在の労働基準法の規定では、労使の合意に基づいて36協定を締結すれば、「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間の限度を超えて働かせることが可能です。
法定労働時間を超える労働時間については「1か月45時間、1年間360時間」といった基準はありますが、労使で特別条項付き協定を結べば、さらにこの基準を超えて働かせることができます。
この特別条項については、本来は一時的・臨時的に認められるものですが、実際には過労死の労災認定基準(1か月80時間)を超える時間の協定が結ばれ、長時間労働が恒常的に行なわれているケースも少なくないようです。

●上限検討に向けた課題

36協定は基本的に労使が合意しているはずなのに実際に長時間労働が行なわれているのは36協定のシステムに問題があるのではないか、また、時間外労働の上限を示すことで、かえって長時間労働を助長することにもつながるのではないか、といった意見もあります。
同検討会では、年内に論点整理を終え、報告書をまとめるとしています。

注目したい法改正の動向

専門職大学院の改革を検討
ビジネススクールや教職大学院など専門職大学院のあり方を議論してきた文部科学省の「中央教育審議会大学分科会大学院部会専門職大学院ワーキンググループ」は、現在の専門職大学院は多様化するニーズを的確に踏まえたプログラム提供ができておらず、学位の付加価値についての理解を得られていない、と指摘しました。
そして、高度専門職業人養成を主たる目的とする修士課程等の専門職学位課程へ移行を促す方策について検討が必要、との提言をまとめました。
今後は、上部組織の大学院部会で検討が行なわれます。
雇用保険の保険料を引下げ
このところ雇用環境が良好なことから、雇用保険の積立金残高は平成26年度末で6兆円を超え、過去最高の水準となっています。
適正水準は4兆円程度とされているため、保険料の引下げや失業者へ向けた給付拡大が検討されています。
厚生労働省では、年内に議論をまとめ、来年の通常国会に雇用保険法の改正案を提出する予定です。
介護保険の更新認定を3年に
厚生労働省の「社会保障審議会介護保険部会」では、保険者の要介護認定に関する業務の簡素化が議論され、現在2年となっている介護保険の更新認定の上限を3年に延長することが提案されました。
年内に改革案を集約し、来年の通常国会に介護保険法の改正案を提出するとしています。
養育費を強制執行可能に
離婚時に決められた養育費や犯罪被害者への賠償金が不払いとなることが多いため、法務省は、債務者の財産を差し押さえる「強制執行」ができるよう民事執行法を改正する検討に入りました。
平成30年には改正案を提出したいとしています。
自動運転の実現目標を公表
経済産業省は、「産業構造審議会新産業構造部会」で自動運転の実現目標を公表しました。
それによると、平成32年に地域限定で無人の自動運転車を解禁し、平成37年には公道での完全自動走行を実現するとしています。
国土交通省と連携して、関連法の検討を進める予定です。

出典・文責 ≫ 日本実業出版社・エヌ・ジェイ出版販売