税理士法第1条で、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と規定されています。その使命を達成するには高潔な倫理観と高度な専門性が求められていると同時にその職能により社会へ貢献することをも期待されています。一方、成年後見制度は、本人の残存能力の活用及び自己決定権の尊重、そして障害者との共生を目指すノーマライゼーションといった、新たな理念との調和を基本としつつ、社会全体が高齢者の保護に取り組むことを求めています。この成年後見制度は、少子高齢化社会が加速度的に進行する我が国において、これからの国民生活を支える重要な社会基盤と位置付けられる制度です。成年後見人等の業務は、代理権・同意権・取消権の三つの権利行使に立脚していますが、その業務に応じて行使権限は異なっており、また、任意後見人については契約した範囲の代理権行使を前提としています。これらの権利行使内容は広範囲にわたると同時に、社会・経済の多様性の中で、その運用に当たっては高度な専門的知識と的確な判断、そして高い倫理性が求められます。そのため成年後見人等及び任意後見人を従来のように本人の血縁者に頼ることが、成年後見制度が有効に機能しない原因となっている場合もあり、そのことが各分野において質の高い専門家に期待が寄せられている理由となっています。税理士は公共的役割を担っており、業務の遂行には高度な専門性と客観的な判断が必要とされるとともに、高潔な倫理観が求められています。税理士法により、これらの資質の保持を制度的に義務づけられている税理士が、成年後見制度に参加することは、成年後見制度の目的に資するとともに、より高い制度運用が図られる一助になるものと考えられます。特に、税理士は財産管理業務や後見業務の監督といった場面においては、その専門性を遺憾なく発揮できるものと考えられます。