相続は、通常、人の死亡によって開始します(「自然的死亡」といいます)。
また、特殊なケースとして、生死不明の者に対して家庭裁判所が失踪宣告をした場合(「擬制死亡」といいます)や災害等により遺体が見つからない者に対して官公署が死亡を認定した場合(「認定死亡」といいます)にも相続は開始します。
「相続の開始時期」については、相続税の申告書の提出期限や納付期限等を判断する場合に問題となります。
(1) 自然的死亡
自然的死亡とは、老衰、病気、事故等により現実に死亡という事実が生じた場合をいい、その具体的な時期は、通常、医師が死亡診断書又は死体検案書に記載した「死亡の年月日時分」となります(民法882)。相続人等の利害関係人において死亡の事実を了知した日、死亡の届出日、死亡した旨が戸籍簿に記載された日のいずれでもありません。
(2) 擬制死亡
擬制死亡とは、不在者の生死が7年間明らかでないとき(「普通失踪」といいます),又は戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(「危難失踪」といいます)、家庭裁判所への申立てにより、生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です(民法30、31)。
(3) 認定死亡
認定死亡とは、水難、火災その他の事変によって、死亡したのは確実であるが、遺体が見つからない等の場合に、その取調べにあたった官公署が死亡地の市町村長に死亡の報告をして、戸籍上一応死亡として扱う制度です(戸籍法89、91)。