「海の心」とは、あらゆる個性を包容して、全体を一つに結ぶことのできる広き心の菩提心。無数の河の流れがあらゆるものを運んで注いでいる「海」を想像してください。「海」は、そこに注ぐ数え切れない河の流れを一つに結ぶ受容の力の象徴です。谷や野を駆け巡ってきた無数の河は、様々なものを運んで「海」に押し流してゆきます。それらを受け入れて一つに結んでいるのが「海」。様々な違いのすべてを受け入れ、浄化し、一つの生命の中に再生させてゆくのが「海の心」。私たち人間の世界にも「海の心」が必要です。一人ひとりの生活の中にも「海の心」が求められています。この世界はあまりにも違いに満ちその違いに人々が心を奪われているからです。違いが違和感を引き出し、差別や憎しみの基となっているからです。私たちが同じ人間であり、同じ魂の存在であったとしても、この世界に生まれることによって、その共通部分を人は忘れてしまうものです。人生の条件とは、違いに満ちているもの。両親を通じて流れ込む、ものの見方・価値観という「血」生まれ育った地域や土地から流れ込む、習慣や価値という「地」時代・社会から流れ込む、知識や思想・価値観という「知」。自分と他人の三つの「ち」(血地知)が違うことに、人はどれほどの違和感を覚えてきたでしょう。そしてその違和感を、どれほどの反感や憎しみに変えてしまってきたでしょう。しかし、もし、その違いを包容する「海の心」を抱くことができるなら私たちは互いが同じ人間であり、同じ魂であることを思い出すことができるのです。
あなたがもし、受け入れ難いものを抱えているなら、広き海原を想ってください。誰かに反感を覚えているなら
すべてを受容する「海」にあなたの心を重ね合わせてください。人は誰も自身の内に始源の「海」を抱いているのです。
(祈りの言葉)
潮の流れのごとき静かな時を心に蘇らせてください。潮の満ち引きのごとき穏やかな呼吸を取り戻させてください。わたくしは「海」から生まれた生命であり、「海」に還ってゆくものであることを思い出させてください。わたくしは、「海」のごとき広き心を育みます。あらゆる個性を包容して、全体を一つに結ぶことができますように。どうか、限りない受容の力を引き出してください。どうか、限りない包容の力をあらわしてください。
「祈りの道(高橋佳子著)」より