職務発明等に係る報奨金等の所得区分について

  1. (問)
    電気メーカー会社に勤める者Xが開発した新型燃料電池が、特許を取得した。
    この新型燃料電池は、勤務の一環としてXが研究・開発したものであり、特許権は社内規定により勤務先の電気メーカーが承継している。特許権の承継に際し、Xは勤務先の電気メーカーより「出願報奨金」として、3万円の支払いを受けている。その後、この新型燃料電池が販売され、電気メーカーに莫大な収益をもたらすこととなった。このため、Xは、電気メーカーより「実績報奨金」として更に8,200万円の現金の支払いを受けた。「出願報奨金」、「実績報奨金」は、所得税上どう取り扱うべきか。
    (回答)
    発明者が有する職務発明などの特許権等につき対価を受ける権利(以下「対価請求権」という。)については、各法令上、雇用契約等の存在を支払いの前提としておらず、また、民法466条《債権の譲渡性》に基づき、譲渡可能とされていることから、雇用契約等を前提とした給与等とするのは相当でないと考えられ、したがって、使用人等の発明等に係る報奨金等については、所得税基本通達において次のとおり取り扱うこととされている。
    1業務上有益な発明、考案又は創作をした者が当該発明、考案又は創作に係る特許を受ける権利、実用新案登録を受ける権利若しくは意匠登録を受ける権利又は特許権、実用新案権若しくは意匠権を使用者に承継させたことにより支払いを受けるもので、これらの権利の承継に際し一時に支払いを受けるものは譲渡所得、これらの権利を承継させた後において支払いを受けるものは雑所得に区分される(所基通23~35共-1(1))。
    2事務若しくは作業の合理化、製品の品質の改善又は経費の節約等に寄与する工夫、考案等(特許又は実用新案登録若しくは意匠登録を受けるに至らないものに限る。)をした者が支払いを受けるものは、その工夫、考案等が、その者の通常の職務内の行為である場合には給与所得、その他の場合には一時所得(その工夫、考案等の実施後の成績等に応じ、継続的に支払いを受けるときは雑所得)に区分される(所基通23~35共-1(3))。
    所得区分の判断に当たっては、受け取った報酬の性質が、上記のいずれに該当するものであるか、個々に判断する必要があるものの、一般的には、特許権を承継することでXが支払いを受けた報酬3万円については、上記1の「権利の承継に際し一時に支払いを受けるもの」に当たると解される。
    よって、Xが支払いを受けた「出願報奨金」は譲渡所得に該当する。
    ※この譲渡所得は、所得税法施行令第82条に規定する「自己の研究の成果である特許権」の譲渡に準じ、総合課税の長期譲渡所得として取り扱うのが相当であると解される。

セルフメディケーション税制のスタート

平成29年1月から、従来の医療費控除の特例として期間限定で(平成33年12月末まで)、「セルフメディケーション税制」が施行されています。
この制度は、健康の維持増進及び疾病の予防への一定の取組※1をしている個人が、特定成分を含んだスイッチOTC医薬品※2を購入することにより、所得税や住民税の控除が受けられる制度です。
具体的には、その年中に支払ったスイッチOTC医薬品の購入の対価が、1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が8万8千円を超える場合には、8万8千円が限度)について、その年分の総所得金額等から控除することとなります。
なお、この制度は、今までの医療費控除とは選択適用となりますので、どちらか有利な制度を選択することとなり、一旦この制度を選択して確定申告書を提出した場合には、その後において納税者が更正の請求をし、又は修正申告書を提出する場合において、セルフメディケーション税制から従来の医療費控除への適用を変更することはできませんので、注意が必要です。

※1 特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診
※2 要指導医薬品及び一般医薬品のうち、医療用から転用された医薬品

配当所得とは

配当所得とは、株主や出資者が法人から受ける配当や投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)及び特定目的信託の収益の分配などの所得をいいます(法24①)。
配当所得は、申告の要否、株式等の区分、源泉徴収税率や税目(所得税、地方税)により次のように分類されます。なお、上場株式等の配当所得(発行済株式総数の3%以上を保有する株主を除きます。)については、確定申告することを選択した場合、総合課税のほかに、申告分離課税を選択することができます。また、この申告分離課税の選択は、申告する上場株式等の配当等に係る配当所得の全額についてしなければならないこととされ、申告分離課税を適用した上場株式等の配当等に係る配当所得については、配当控除は適用されません(措法8の4)。

「源泉徴収ありの特定口座」のメリット、デメリット

「源泉徴収ありの特定口座」のメリット
① 証券会社が源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得や配当所得の年間の損益を計算して「年間取引報告書」「特定口座年間取引報告書」を作成してくれる。
② 源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得や配当所得の税金の計算をして源泉徴収(納付)してくれるので確定申告が不要。
③ 申告不要を選択した場合、その口座内で生じた上場株式等の譲渡所得、配当所得の金額及び利子所得の金額については合計所得金額に算入されないので、所得控除の適用要件や国民健康保険の保険料、医療費の窓口負担割合などに影響しない。
④ 特定口座内の国内の上場株式等だけが、特定管理株式等の価値喪失による「みなし譲渡損失の特例」を適用することができる(源泉徴収なしの特定口座も適用可能)。

「源泉徴収ありの特定口座」のデメリット
① 源泉徴収口座以外の口座や他の証券会社の損益と損益通算するには申告が必要。
② 源泉徴収口座の譲渡損失の繰越控除を利用するためには申告が必要。
また、源泉徴収口座の譲渡損失を申告する場合、その源泉徴収口座内の株式等の配当金所得の金額及び利子所得に金額をすべて申告しなければならない。
③ 上場株式の配当金の受取り方法を「株式数比例配分方式」(図表2-10-2参照)に設定していないと、特定口座内で上場株式の配当金を受け取ることができない※。
④ 上場株式等の配当金等は、原則として、1回に支払を受けるごと(銘柄別の支払時期ごと)に確定申告・申告不要の選択をすることができるが、特定口座に受け入れた上場株式等の配当金等については、特定口座ごとに確定申告するかしないかの選択をしなければならない(譲渡損失を申告する場合はすべて申告(上記②参照))。
⑤ 特定口座の株式等の譲渡日は「受渡日」が基準となるので「約定日」を選択することができない(年末における「益出し」「損出し」の調整期間が短くなる。)。
⑥ 特定口座の取得価額については、同一銘柄を同一日に売買した場合、「売」と「買」の実際の順序に関係なく、先にすべての「買」が行われ、その後にすべての「売」がされたものとして処理される(「クロス取引」で「益出し」「損出し」ができない。)。
⑦ 特定口座の「源泉徴収あり・なし」の変更は、毎年最初に上場株式等の譲渡をする時までにできるが、前年に「源泉徴収あり」を選択していた場合で、本年最初に上場株式等の譲渡をする時より前にその特定口座に上場株式等の配当金等を受け入れていたときは、変更することはできない。