災害、盗難又は横領によって自己又は生計を一にする配偶者やその他の親族で総所得金額等が38万円以下の者の所有する資産に損害を受けた場合や、災害等に関連してやむを得ない支出をした場合に「雑損控除」が受けられます(所得税法第72条)。
この「雑損控除」の対象となる損害は、損害発生原因が被害者の意思に基づかない災害、盗難又は横領によるもの に限られます。そのため、詐欺によりだまされた場合や脅迫により脅し取られた場合の損害は、雑損控除の対象となりません。そのよう理由から、「振り込め詐欺」により損害を受けた場合には「雑損控除」は認められません。
なお、「耐震偽装による損害」は、マンション購入者が販売業者から騙されたような感じがしますが、国税庁が「雑損控除」の対象として認めています。
所得税の確定申告とは?
私たちの生活の中で最も関係深い税金は、「所得税」です。そこで、最初に所得税についてご説明します。所得税は、個人の所得に対して課税する税金で、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得を計算して、住所地を管轄する税務署に申告(これを「確定申告」といいます。)しなければなりません。このように自分で所得金額を計算して税金を納める制度を「申告納税制度」といいます。通常、サラリーマンは毎月の給料から所得税等が源泉徴収され、年末に勤務先で所得税の精算(これを「年末調整」といいます。)をしていますので、確定申告をする必要がありません。但し、次のような場合には、サラリーマンでも確定申告が必要となります。
【サラリーマンでも確定申告が必要なケース】
① 給与の年収が2000万円を超える場合
② 給与や退職所得以外の所得金額の合計金額が20万円を超える場合
③ 給与を2ヶ所以上からもらっている場合
④ 給与から源泉徴収がされていない場合
確定申告が必要な方は、所得のあった翌年の2月16日から3月15日までの期間(「確定申告期間」といいます。)に、税務署へ確定申告書を提出しなければなりません。なお、「医療費控除」や「ローン控除」などを申請して所得税の還付を受ける方は、2月16日まで待たなくても、翌年の1月1日から確定申告をすることができます。
所得税は、給与所得や退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば確定申告の必要がありません(上記「サラリーマンでも確定申告が必要なケース」の②)が、住民税にはこのような取扱がないため、所得金額が20万円以下であっても市町村の住民税課(納税課)などに住民税の申告が必要となりますので注意が必要です。
なお、所得がない方であっても国民健康保険加入者の保険料の減額判定や各種福祉関係の所得証明(非課税証明)等の交付などに必要なため、住民税の申告書の提出が必要な場合があります。
税理士が担うべき成年後見制度について
税理士法第1条で、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と規定されています。その使命を達成するには高潔な倫理観と高度な専門性が求められていると同時にその職能により社会へ貢献することをも期待されています。一方、成年後見制度は、本人の残存能力の活用及び自己決定権の尊重、そして障害者との共生を目指すノーマライゼーションといった、新たな理念との調和を基本としつつ、社会全体が高齢者の保護に取り組むことを求めています。この成年後見制度は、少子高齢化社会が加速度的に進行する我が国において、これからの国民生活を支える重要な社会基盤と位置付けられる制度です。成年後見人等の業務は、代理権・同意権・取消権の三つの権利行使に立脚していますが、その業務に応じて行使権限は異なっており、また、任意後見人については契約した範囲の代理権行使を前提としています。これらの権利行使内容は広範囲にわたると同時に、社会・経済の多様性の中で、その運用に当たっては高度な専門的知識と的確な判断、そして高い倫理性が求められます。そのため成年後見人等及び任意後見人を従来のように本人の血縁者に頼ることが、成年後見制度が有効に機能しない原因となっている場合もあり、そのことが各分野において質の高い専門家に期待が寄せられている理由となっています。税理士は公共的役割を担っており、業務の遂行には高度な専門性と客観的な判断が必要とされるとともに、高潔な倫理観が求められています。税理士法により、これらの資質の保持を制度的に義務づけられている税理士が、成年後見制度に参加することは、成年後見制度の目的に資するとともに、より高い制度運用が図られる一助になるものと考えられます。特に、税理士は財産管理業務や後見業務の監督といった場面においては、その専門性を遺憾なく発揮できるものと考えられます。
成年後見制度の概要及び基本理念について
1. 成年後見制度の概要
成年後見制度は、以下の三つの個別の制度から構成されています。
(1) 法定後見制度
法定後見制度の内容は、判断能力が不十分な者に対する従来の「禁治産」、「準禁治産」を改正した「後見」、「保佐」と、新設された軽度の判断能力の低下がみられる人を対象とする「補助」の三つの類型に分けることによって、対象者の範囲を広げ本人の支援をおこなう制度です。
(2) 任意後見制度
任意後見制度の内容は、判断能力が健常な段階で、契約によって、判断能力が低下した場合における後見の範囲や後見人をあらかじめ定めておくことができる制度です。
法定後見制度が、既に本人が判断能力を欠いている場合に適用される制度であるのに対して、任意後見制度は、事前的な措置を自らが定めることを目的とした新しい制度です。いわば自らの将来は自らが事前に決めることを最大限に尊重した制度と言えます。
(3) 後見登記制度
旧制度では、禁治産、準禁治産宣告の事実は戸籍に記載され、プライバシーの侵害及び差別感を生む等の様々な問題が生じていました。しかし取引の安全性確保には取引相手が他の法律行為能力の確認が求められる一方、個人情報の保護等も十分に確保される必要があります。
後見登記制度はこれらの問題解決を図るため、制度の利用に関する情報を「登記」することを義務付けるとともに、限定された者以外はその情報の入手を不可能とする新しい制度です。
2. 成年後見制度の理念
禁治産、準禁治産制度の諸問題の解決を図るために、民法等の改正が検討され、新しい成年後見制度が平成12年4月1日よりスタートしました。
この法改正の目的は、本人の身上監護及び財産管理の達成になります。そして、その基本理念は、一つには本人の残存能力の活用による自己決定権の尊重であり、二つ目には、障害のある者も家族や地域で通常の生活を送ることができる社会を作るというノーマライゼーションの理念との調和になります。したがって、新制度では財産管理を行う場合であっても、本人の身上に配慮すべき義務(民法第858条)が課せられており、また個人の持つ損県や権利の擁護に対しても旧制度に見られなかった義務が課せられていることから、いわば人間尊重の理念が基本にあるといえます。
配偶者へ居住用不動産等を贈与した場合の特例
配偶者の内助の功に報いるための大きな贈り物をしたいとお考えの方に、配偶者へ不動産等の贈与はいかがですか。
婚姻期間が20年以上である配偶者から居住用の不動産(自宅家屋とその敷地)の贈与を受けたときには、基礎控除額110万円のほかに2,000万円までの配偶者控除額があります。
この特例の適用を受ける場合には、表1に掲げる要件を満たし、贈与税の申告書にこの特例による控除額等の事項を記載するとともに、表2の書類を添付しなければなりません。
【表1 特例適用要件】
ア 贈与者は配偶者であること
イ 婚姻の届けをした日から贈与を受ける日まで20年以上でること
ウ 贈与を受けた財産は国内にある不動産(土地、建物)又は不動産の購入資金であること。
贈与財産が購入資金である場合、贈与を受けた年の翌年3月15日までに不動産を購入していること
エ 贈与を受けた不動産又は購入した不動産に、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、かつその後引き続き居住する見込みであること
【表2 添付書類】
ア 受贈者の戸籍の謄本又は抄本(贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成されたものに限ります。)
イ 受贈者の戸籍の附票の写し(贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成されたものに限ります。)
ウ 居住用不動産に関する登記事項証明書
エ 受贈者の住民票の写し
配偶者控除の適用を受けた財産(配偶者控除の適用された部分について)は、相続開始3年以内の贈与であっても相続税の課税価格に加算されませんので、妻にもともと財産が少ない場合には、財産の分散が図られ相続税対策にもなります。
また、贈与をした自宅等をやむなく売却することになった場合、その土地と家屋がご夫婦の共有名義であると、居住用財産の特別控除(譲渡益から3,000万円を控除できる)の特例をそれぞれ受けられることにもなり、結果的に所得税の節税効果となります。
ただし、この特例はあくまでの贈与税の計算に適用されるものなので、贈与にともない生じる不動産取得税(県税)や登録免許税については通常の課税になりますのでご注意下さい。
「失踪宣告」と「認定死亡」の違いについて
「失踪宣告」も「認定死亡」も、本当にその人が死亡したのかどうかは不明であり、死亡したものとして取り扱うという点では共通していますが、決定する機関が「家庭裁判所」と「行政機関」との違いがあります。しかし,もっとも根本的な違いは,失踪宣告は死亡したものと「みなす」というものであるのに対し,認定死亡は死亡したことを「推定する」ということです。どう違うのかというと,認定死亡は「推定」ですので、反対の証拠を提出すれば覆すことができます。ところが、失踪宣告は反対の証拠を提出しても覆すことができません。したがって,失踪宣告による死亡という効力を覆すためには、失踪宣告の取消しの手続きを家庭裁判所でしなければなりません。例えば,生死不明になり,認定死亡又は失踪宣告に基づいて相続が開始した後,生存していたとします。この場合,認定死亡であれば,相続人は生存していた者に財産を返さなければいけません。ところが,失踪宣告の場合には,相続人はとりあえず生存していた者に財産を返す必要はありません。生存していた者が財産を取り戻すためには,失踪宣告を取り消す審判を家庭裁判所で受けなければなりません。
成年後見制度について
12月3日と4日に東京税理士会が主催し、税理士のための成年後見人研修が開催されました。高齢化社会の到来により、成年後見人の重要性が注目されてきました。特に、高齢者を狙った悪質商法や詐欺が多発していることからもその必要性が増してきています。
成年後見制度の理念は、成年被後見人の「自己決定の尊重」「身上保護の重視」「ノーマライゼーション」により、成年被後見人にとって最善の利益となるようすることが成年後見人の職務ですので、その理念を心に重く受け止めて成年後見事務に当たらなければならないと思いました。