為替差損益について

為替差損益は、原則的には異なる通貨の交換(往復)により発生します。例えば、円貨を外貨に交換し、その外貨を円貨に交換した時(円転した時)に、所得税法第36条の「収入すべき金額」が実現したと考えられますので、その実現した金額を為替差損益として雑所得の所得計算を行います。
したがって、購入した外国通貨をそのまま保有し続ける限りにおいては、為替差損益については未実現の評価損益に過ぎないものと考えられますので、所得として認識する必要はありません。また、外貨建預金として預け入れていた元本部分の金銭について、①同一の金融機関に、②同一の通貨で、③継続して預け入れる場合の預貯金の預け入れも、外貨建取引に該当しない(円換算しない)こととされていますので、その元本分部に係る為替差損益が所得として認識されることはありません(令167の6②)。(なお、実務的には、他の金融機関に預け入れる場合であっても、同一の外国通貨で行われる限り、令167の6②の預け入れに類するものとして、同様に扱われています。)
ただ、為替差損益は異なる通貨の交換(往復)の場合に発生するだけではなく、異なる通貨の交換(往復)以外にも、為替差損益が実現したと認識しなければならない場合があります(新たな経済的価値が外部から流入したことにより、それまでは評価差額にすぎなかった為替差損益に相当するものが、所得税法第36条の「収入すべき金額」として実現したこととなる場合)。
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四書の中の『大学』とは

「大学」は入徳の書として曽子(そうし)によって著されたものであり、四書(「論語」「大学」「中庸」「孟子」)五経(「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」)の最初に学ぶべきものとされている。
儒教の根本思想である「修(しゅう)己(こ)治人(ちしん)」とは、自分をより高い人間性を持つことに導いてゆき、それによって人にもより良い影響を与えて正しい人の道へ進ませることができるということをいう。

大学の三綱領(『大学』における大切な「三つの柱」)
(一) 明徳(めいとく)を明らかにする
(二) 民に親しむにあり
(三) 至善に止まるに在り

「八条目」(三綱領を実践してゆく手段方法)
大学の八条目はその実践工夫である。
格物、致知、誠意、正心で自らの身を修める工夫をして斉家、治国平天下はその修まった身を世に処して進退する道を説く。
(一) 自分自身を正す(格物)
(二) 自分自身を正すことによって自ら知が到る(致(ち)知(ち))
(三) 知が到ることによって意識感情が正常になる(誠意)
(四) 意が正常になると内なる心も正しくなる(正心)
(五) 心が正しくなると身がよく修まる(修身)
(六) 身が修まると家も斉うようになる(斉家)
(七) 家が斉うと、国も治まるようになる(治国)
(八) 国も治まると天下も平らかになっていく(平天下)

大学書き下し文
大学の道は、明徳(めいとく)(天から授かった特性)を明らかにするに在(あ)り、民を新(あら)たにするに在り、 至(し)善(ぜん)(最高の善)に止(とど)まるに在り。 止まるを知って后(のち)定(さだ)まるあり、定まって后(のち)よく静かに、静かにして后(のち)よく安く、 安くして后(のち)よく慮(おもんばか)り、慮りて后(のち)能(よ)く得(う)。 物に本末有り、事に終始有り。先後(せんご)する所(ところ)を知ればすなわち道に近し。 古(いにしえ)の明徳(めいとく)を天下に明らかにせんと欲する者は、まず其の国を治む。 其の国を治めんと欲する者は、先(ま)ず其の家を斉(ととの)う。其の家を斉えんと欲する者は、まず其の身を修む。其の身を修めんと欲する者は、まず其の心を正しくす。其の心を正しくせんと欲する者は、まず其の意(こころばせ)を誠(まこと)にす。其の意(こころばせ)を誠にせんと欲する者は、まず其の知を致す。知を致すは物に格(いた)るに在り。物格って后(のち)知至る。 知至って后(のち)意(こころばせ)誠なり。 意(こころばせ)誠にして后(のち)心正し。 心正しくして后(のち)身修まる。 身修って后(のち)家斉(ととの)う。 家斉(ととの)いて后(のち)国治まる。 国治まって后(のち)天下平らかなり。 天子よりもって庶人に至るまで、壱(いつ)に是(これ)(一切)に皆身を修むるを以て本と為(な)す。 その本乱れて末(すえ)治まる者はあらず。 その厚くするところの者を薄くして、その薄くするところの者を厚きは、いまだこれあらざるなり。

先世の結縁

或(あるい)は一(いっ)国(こく)に生(うま)れ、或(あるい)は一郡(いちぐん)に住(す)み、或(あるい)は一県(いちけん)に処(お)り、或(あるい)は一村(いっそん)に処(お)り、一樹(いちじゅ)の下(もと)に宿(やど)り、一河(いちが)の流(ながれ)を汲(く)み、一夜(いちや)の同宿(どうしゅく)、一日(いちにち)の夫婦(ふうふ)、一所(いっしょ)の聴聞(ちょうもん)、暫時(ざんじ)の同道(どうどう)、半時(はんじ)の戯笑(げしょう)、一言(いちげん)の会釈(えしゃく)、一坐(いちざ)の飲酒(おんしゅ)、同杯(どうはい)同酒(どうしゅ)、
一時(いちじ)の同車(どうしゃ)、同畳同坐(どうじょうどうざ)、同牀一臥(どうしょういちが)、軽重(けいちょう)異(ことな)るあるも、親疏(しんそ)別(べつ)有(あ)るも、皆(みな)是(これ)れ先世(せんぜ)の結縁(けちえん)なり。
(聖徳太子「説法(せっぽう)明眼論(みょうげんろん)」)
(訳)
ある国に生まれ、ある地方に住み、ある県に住み、ある村に住み、同じ木の下での雨宿り、同じ河の水を使い、一夜の同宿、一日だけの夫婦関係、同じところで話を聴き、ほんの短い同伴、ちょっとした微笑み、何気ないご挨拶、宴席での飲酒、たまたまの同車、同席、同宿、これらのことは関係が深い、薄い、親しい、疎いと様々であるが、全て、生まれる前の前世の因縁が関係しているのです。

小學(小学)とは

『小學(小学)』は、187年に朱熹が劉子澄に編纂させた儒教的な初等教科書で、朱子学の基本となる書です。儒学では『四書』(『論語』・『孟子』・『大學』・『中庸』)と『六経』が重要な書となりますが、朱子学では、これに『小學』と『近思録』が加わります。
小學は年少者のための初級テキストとされましたが、その内容は古聖人の善行や箴言および人倫の実践的教訓などを集めた日常の礼儀作法や格言・善行を行うための啓蒙的なものです。
四書五経を学ぶ順序は、『小學』→『近思録』『大學』→『論語』→『孟子』→『中庸』→『六経』です。
小學は「内篇」と「外篇」があり、「内篇」は、立教、明倫、敬身、稽古の4篇からなり、主として原則的な修養の理や温故知新を説いています。「外篇」は、嘉言、善行の2嘉言からなり、古人の言行が書かれています。『小學』は、自己を治める修己として、子供教育に非常に優れた教育書、道徳書といえます。

【小學序】
古は小學、人を敎うるに灑掃・應對・進退の節、親を愛し、長を敬し、師を隆び、友に親しむの道を以てす。皆、脩身・齊家・治国・平天下の本と爲す所以にして、必ず其れをして講じて、之を幼穉の時に習わしむ。其の習い、知と長じ、化、心と成り、扞格して勝えざるの患い無からんことを欲するなり。今、其の全書は見る可からずと雖も、傳記に雜出する者亦多し。讀む者往往直古今の宜しきを異にするを以てして、之を行う莫し。殊に知らず、其の古今の異なること無き者は、固より未だ始より行う可からざるにはあらざるを。今、頗る蒐集して、以てこの書を爲し、之を憧蒙に授け、其の講習に資す。庶幾わくば風化の万一に補い有らんかと爾か云う。
淳煕丁未三月朔旦、晦菴題す
【小學題辭】
元亨利貞は天道の常、仁義禮智は人性の綱。凡そ此れ厥の初め不善有ること無く、藹然たる四端、感に隨いて見わる。親を愛し兄を敬し、君に忠に長に弟なる、是を秉彛と曰う。順うこと有りて彊うること無し。惟れ聖は性のままなる者、浩浩たる其の天、毫末をも加えずして萬善足る。衆人は蚩蚩、物欲交々蔽い、乃ち其の綱を頹して此の暴棄に安んず。惟れ聖斯に惻れみ、學を建て師を立て、以て其の根に培い、以て其の支を達す。小學の方は、灑掃應對、入りては孝、出でては恭、動くには悖ること或る罔く、行いて餘力有らば、詩を誦み書を讀み、詠歌し舞蹈して、思うには逾ゆること或る罔し。理を窮め身を脩むるは斯れ學の大、明命赫然として内外有ること罔し。德崇く業廣くして、乃ち其の初めに復る。昔足らざるに非ず、今豈餘有らんや。世遠く人亡せ、經殘われ敎え弛み、蒙養端しからず、長じて益々浮靡、郷に善俗無く、世に良材乏しく、利欲紛挐し、異言喧豗す。幸に茲の秉彛は極天墜つる罔し。爰に舊聞を輯め來裔を覺さんことを庶う。嗟嗟小子、敬みて此の書を受けよ。我が言の耄なるに匪ず。惟れ聖の謨なり。

教育勅語の12徳

次の12項目を「教育勅語の12徳」といいます。
1.孝行⇒子は親に孝養を尽す。
2.友愛⇒兄弟姉妹は仲良く。
3.夫婦の和⇒夫婦はいつも仲睦まじく。
4.朋友の信⇒友達はお互い信じ合ってつき合う。
5.謙遜⇒自分の言動を慎む。
6.博愛⇒広くすべての人に愛の手を差し伸べる。
7.修学習業⇒勉学に励み職業を身につる。
8.智能啓発⇒知徳を養い才能を伸ばす。
9.徳器成就⇒人格の向上に努める。
10.公益世務⇒広く世に中の人々や社会の為になる仕事に励む。
11.遵法⇒法律や規則を守り社会の秩序に従う。
12.義勇⇒正しい勇気をもってお国の為に真心を尽くす。

退職所得の選択課税

退職所得の選択課税とは、非居住者が受けるべき退職所得でその支払の基因となった退職に基づいて、その年中に支払いを受けるべきものの総額を、居住者として支払を受けたものとみなして計算した場合の税額が、その退職所得についてその支払の際に源泉徴収された税額よりも少額である場合には、確定申告を行うことによって、その差額の還付を受けることができる制度です(法171、172、173)。この場合、基礎控除等所得控除は一切適用されません。また、受給者が選択課税を受ける場合であっても、退職手当等の支払者はその支払の際に、国内源泉所得部分に対して20%(平成25年から平成49年までは、20.42%)の税率で源泉徴収を行う必要があります。なお、退職所得の選択課税は、常にその選択を受けた方が有利とは限りません。例えば、居住者としての勤務期間が比較的短期間である場合には、20.42%の源泉徴収税額の方が少額となることもあります。
【退職所得の選択課税の手続き要件】
退職所得の選択課税を受けようとするときは、その源泉徴収された税額の全部又は一部の還付を受けるためにその年の翌年1月1日(同日前に選択課税の対象となる退職所得の総額が確定した場合には、その確定した日)から5年以内に、以下の事項を記載した申告書を所轄税務署長に提出しなければなりません(法173、令297、規70)。
① 退職所得の総額及びその総額について退職所得控除額を控除し、その控除後の1/2相当額について計算した所得税等の額
② 退職所得について源泉徴収された又は源泉徴収されるべき所得税等の額
③ ①の税額から②の税額を控除した額

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住宅借入金等特別控除のチェックポイント

【居住者】
□ 住宅を取得した時は、非居住者ではないか。
☞ 住宅の売買契約時及び先行取得の土地の取得時は非居住者であっても構いませんが、住宅の取得時(引渡しを受けた時)は居住者でなければなりません。

□ 公務員が海外転勤中に住宅を取得した場合、控除が受けられないとしていない。
☞ 国家公務員、地方公務員(日本国籍を有しない者及び日本国籍を有していても
現に国外に居住し、かつ、その地に永住すると認められる者を除く)は、海外に滞在する期間も日本国内に住所を有するものとみなして所得税法の規定を適用することとされています。

【留守家族の範囲】
□ 単身赴任の場合に、留守家族である「配偶者」は控除対象配偶者に限定されていると考えていないか。
☞ 配偶者の場合は、あなたと生計を一にしているかどうかにかかわらず、単身赴任が解消した後は配偶者と共に居住すると認められるのであれば、あなた自身が入居し引き続き居住の用に供しているものとして取扱われます。

□ 妻子のほか両親と同居してきたが、転勤命令を受け、転勤先に妻子を伴い転居した場 合、引き続き居住しているのが両親だけのため控除が受けられないとしていないか。
☞ 両親であっても、転居前において同居し、かつ、生計を一にしている場合には、転勤が解消した後は両親と共に居住すると認められるのであれば、あなた自身が入居し引き続き居住の用に供しているものとして取扱われます。 なお、転勤に伴う転居前には同居していなかった両親に留守を預かってもらう場合は、たとえ両親と生計を一にしていたとしても、本人が引き続き居住の用に供しているものとする取扱いを受けることはできません。

【やむを得ない事情】
□ 離婚後、元妻とともに生計を一にする子が引き続き居住する場合に、控除が受けられるとしていないか。
☞ 仮に離婚が「やむを得ない事情(措通41-1,41-2)」に当たるとしても、その事情が解消した後は、あなたがその子とともに居住するとは認められませんので、控除は受けられません。

□ 親の介護のために妻子を残して一時的に転居した場合に、控除が受けられないとしていないか。
☞ 「やむを得ない事情(措通41-1,41-2)」には、転勤のような外的な要因に伴う事情だけでなく、転地療養のような個人的な事情も含まれますので、親の介護も「やむを得ない事情」に該当します。

□ 転地療養のため家族全員で一時実家に移り住んだ場合に、「再居住の場合の再適用の特例」を受けられるとしていないか。
☞ 転地療養は、勤務先からの転任命令のような外的要因ではなく、個人的事情であり、これに伴い家族とともに転居する場合は「再居住の場合の再適用の特例」の要件である「やむを得ない事情(措法41⑱)」には該当しないこととなります。

□ 夫が転任命令を受け転居するが、妻は夫に同行するため会社を休職する場合、再び居住の用に供したとしても、夫は「再居住の場合の再適用の特例」を受けられるが、妻は受けられないとしていないか。
☞ 妻の転居は妻の勤務先からの転任命令等やむを得ない直接的な事情があるわけではありませんが、夫の転任命令という外的な要因に基因していますので、「再居住の場合の再適用の特例」の要件である「やむを得ない事情(措法41⑱)」に該当することとなります。

【賃貸】
□ 転勤が解消し帰ってきた年に賃貸していた場合に、年末時点では居住しているとして 控除を受けていないか。
☞ 帰ってきた年に賃貸していた場合は、翌年から控除が受けられることとなります。

□ 当初3年の予定であった転任期間中に3年契約で住宅を賃貸していたが、1年で転勤が解消された場合に、2年間他の物件を賃貸することとなったため、控除は受けられないとしていないか。
☞ 再び居住の用に供する日について、そのやむを得ない事情の解消後、直ちに再居住するとか、1年以内に再居住するとかいった制約があるわけではないため、その住宅に係る賃貸借が終了し、再び居住の用に供した時は、その翌年から残っている期間について控除を受けることができます。
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エンディングノートを掲載しました。

エンディングノートとは、自分の人生の記録や、残された人に伝えたい情報を書き記した記録のことです。
「遺言書」と「エンディングノート」の違いは、どちらも残された人に対して伝えたい事項を記載するという点では共通ですが、「遺言書」は法的効力を持ちますが、「エンディングノート」は法的効力を持たないといった点で相違があります。
「エンディングノート」は、「遺言書」とは違い形式にとらわれず自由に作成することができるといった利点があるとともに、「エンディングノート」ならではの次のようなメリットがあります。
1. エンディングノートに印鑑や通帳などの財産の所在や貸付金や借入金などの財産内容を記載しておくことで、残された遺族が困らないといった利点があります。
2. キャッシュカードや年金手帳、住民登録カード等の所在や連絡先などの情報を記録しておくことにより、日常生活の備忘録として使えるといった利点があります。
3. 家族に対する自分の気持ちを伝えることができ、残された家族の悲しみを癒すことに役立つといった利点があります。
掲載したエンディングノートの内容は、次のとおりです。
① 遺  言
② 財産の寄付等
③ 感謝のメッセージ
④ 看病・介護と死
⑤ 病院・病歴
⑥ 人生・自分史
⑦ 趣味趣向
⑧ 葬  儀
⑨ 埋  葬
⑩ 供  養
⑪ 財産関係
⑫ 債務関係
⑬ 家系図
⑭ 親類、友人、知人リスト

幸田露伴の三福

惜福(せきふく)
幸福に巡り合った時には、それを使い尽くさずに大切にその一部でも目に見えない気持ちで残しておく、運の良い人は惜福の工夫あり。

分福(ぶんぷく)
自分に与えられた福を他人に分ける事を心掛ける惜福は、自分一身での福を使い尽くさない工夫であるが、分福は、福を分ける相手がはっきりとしており「仁」の心得えあり。豊臣秀吉は分福といわれ、惜福に欠き、徳川家康は、惜福の人であったが分福には、欠けるところがあった。

植福(しょくふく)
自らのカや情や知を人の世の慶びゃ幸せとなるべく寄与してゆく。人の世の慶福を増進して育成してゆけば、自らも又、福に帰る。木を植えて枝葉を整えて成長させるは惜福といえる。果実は、自らだけでなく人に分ける事は分福となり、次のために種をまいて人の為、子孫のためするは植福なり。

説法明眼論

是の如く我れ聞く、或は一国に生れ、或は一郡に住み、或は一県に処り、或は一村に処)り、一樹の下に宿り、一河の流を汲み、一夜の同宿、一日の夫婦、一所の聴聞、暫時の同道、半時の戯笑、一言の会釈、一坐の飲酒、同杯同酒、一時の同車、同畳同坐、同牀一臥(どうしょういちが)、軽重異るあるも、親疏別有るも、皆是れ先世の結縁なり。

(聖徳太子「説法明眼論」)