財産評価のチェックポイント

第11章 債務控除

限定承認をした場合の債務控除

重要度: 3 / 5
誤り事例:
限定承認をした相続について、通常の相続と同様に被相続人の債務全額を無制限に債務控除の対象とした。
正しい評価方法:
限定承認をした場合、相続人は相続財産の限度でのみ被相続人の債務を弁済する責任を負うため、債務控除の対象となる債務も相続財産の価額を限度とする点に留意し、あわせてみなし譲渡所得課税(準確定申告)の要否も確認します。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

借入金 / 未払金 / クレジットカードの未払額 / 団体信用保険の住宅ローン

重要度: 4 / 5
誤り事例:
団体信用生命保険が付保されている住宅ローンについて、被相続人の死亡により保険金で完済されるにもかかわらず、当該住宅ローン残高を債務控除の対象とした。
正しい評価方法:
団体信用生命保険により保険金で完済される住宅ローンは、被相続人の債務として現実に相続人が承継・弁済するものではないため、原則として債務控除の対象とはなりません。それ以外の借入金、未払金、クレジットカードの未払額は、課税時期現在の残高を確定金額により債務控除します。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

公租公課 / 所得税 / 住民税 / 事業税 / 市県民税 / 固定資産税 / 地方税 / 消費税 / 介護保険料 / 後期高齢者医療保険料 / 国民健康保険料 / 公共料金

重要度: 4 / 5
誤り事例:
被相続人の死亡時点で納期未到来の固定資産税や住民税について、賦課期日(1月1日)時点で納税義務が生じていることを見落とし、債務控除の対象から除外した。
正しい評価方法:
被相続人の死亡時点で納税義務が確定している公租公課(賦課期日が到来しているが納期限が未到来のものを含む)は、未払いの金額を債務控除の対象とします。準確定申告により確定する所得税・消費税等の未払額も同様に債務控除の対象とします。
関係法令・通達
相続税法13条14条(債務控除)、相続税法基本通達13-713-8

前受賃料

重要度: 2 / 5
誤り事例:
賃貸不動産の前受賃料(課税時期後の期間に対応する部分)について、債務として認識せず未収賃料と同様に資産として計上した。
正しい評価方法:
課税時期後の期間に対応する前受賃料は、賃借人に対する返還義務(または役務未提供部分に対応する債務)として、日割り計算等により算定した金額を債務控除の対象とすることを検討します。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

延滞税・延滞金 / 加算税 / 過少申告加算税 / 重加算税 / 利子税 / 罰金 / 追徴金

重要度: 3 / 5
誤り事例:
被相続人が生前に賦課されていた延滞税、加算税、罰金等について、通常の公租公課と同様にすべて債務控除の対象とした。
正しい評価方法:
被相続人の生前の税務調査等に起因する延滞税・利子税のうち被相続人の債務として確定しているものは債務控除の対象となりますが、加算税(過少申告加算税、重加算税等)や罰金は、被相続人の一身専属的な制裁的性質を有するものとして、債務控除の対象とならない場合がある点に留意し、個別に確認する必要があります。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

損害賠償金債務 / 保証債務 / 連帯債務

重要度: 3 / 5
誤り事例:
主債務者の資力が十分であるにもかかわらず、被相続人の保証債務全額を無条件に債務控除の対象とした。連帯債務について、被相続人の負担部分を超えて全額を控除した。
正しい評価方法:
保証債務は、原則として主債務者が弁済不能の状態にあり、保証人が現実に履行しなければならず、かつ主債務者に求償しても弁済を受ける見込みがない場合に限り債務控除が認められます。連帯債務は、被相続人の負担すべき部分が明らかである場合、その負担部分の金額のみを債務控除します。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

退職金を支給した場合

重要度: 2 / 5
誤り事例:
被相続人が事業主として使用人に支給すべき退職金について、支給が確定しているにもかかわらず債務控除の対象から漏らした。
正しい評価方法:
被相続人の死亡時点で使用人等に対する退職金の支給が確定している場合、その未払額は事業上の債務として債務控除の対象とします。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

抵当権が設定されている土地

重要度: 3 / 5
誤り事例:
抵当権が設定されている土地について、抵当権による担保価値の減少を理由に土地の評価額自体を減額した。
正しい評価方法:
抵当権の目的となっている土地であっても、原則として土地自体の評価額は減額せず、被担保債務(借入金残高)を別途債務控除の対象として計上します(担保設定の事実は評価額に直接影響しません)。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

消滅時効の完成した債務

重要度: 2 / 5
誤り事例:
消滅時効が完成しているものの、被相続人(相続人)が時効の援用をしていない債務について、債務控除の対象から一律に除外した。
正しい評価方法:
消滅時効が完成していても、時効の援用がなされていない限り債務は消滅していないものとして扱われるため、現実に存在し確実と認められる債務は原則として債務控除の対象とすることができます(個別の事実関係を確認する必要があります)。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

遺言執行費用 / 税理士費用 / 相続財産に関する費用 / 相続登記費用

重要度: 4 / 5
誤り事例:
遺言執行費用、相続税申告のための税理士報酬、相続登記費用等の相続手続に付随する諸費用について、被相続人の債務と同様に債務控除の対象とした。
正しい評価方法:
遺言執行費用、税理士費用、相続登記費用等の相続開始後に相続人が負担する諸費用は、被相続人の債務ではなく相続手続に伴い相続人が新たに負担する費用であるため、原則として債務控除の対象とはなりません。
関係法令・通達
相続税法13条及び相続税法基本通達13-1以下

葬式費用 / 葬式会場使用料 / お通夜の費用 / 仮葬式 / 火葬費用 / 火葬場使用料 / 納骨費用 / 死体捜索費用 / 遺骨運搬費用 / 霊柩車費用 / 死亡診断書 / 死亡広告 / 心付け / お布施 / 戒名料 / 読経料 / お供物 / 花輪や生花の費用 / 礼状の作成費用 / 仮位牌 / 位牌の購入費用 / 交通費(葬式に関連する)

重要度: 4 / 5
誤り事例:
領収書が発行されないお布施や戒名料、心付け等について、証憑がないことを理由に葬式費用として一切計上しなかった。逆に香典返しの費用や墓石の購入費用まで葬式費用に含めて控除した。
正しい評価方法:
通夜・葬儀・火葬・納骨等に通常要する費用(お布施、戒名料、心付け等、社会通念上必要と認められるものを含む)は、葬式費用として控除の対象とすることができます。領収書がない場合でも、支払先、支払日、金額、支払内容等を記録し、支払事実を確認できる資料を保存しておくことが重要です。ただし香典返戻費用や墓地・墓石の購入費用など、通達上明確に控除対象外とされているものは含めません。
関係法令・通達
相続税法13条1項2号(葬式費用)、相続税法基本通達13-4

永代供養料 / 遺体解剖費用 / 香典返戻費用 / 初七日の費用 / 四十九日の費用 / 法会費用

重要度: 3 / 5
誤り事例:
香典返戻費用や初七日・四十九日等の法会費用について、通常の葬式費用と同様に一律控除の対象とした。永代供養料についても検討せずに控除対象とした。
正しい評価方法:
香典返戻費用、初七日・四十九日等の法会(法要)に要する費用は、通夜・葬儀に直接要する費用とは区別され、原則として葬式費用として債務控除の対象とはなりません。永代供養料についても、通夜・葬儀と直接関連しない場合は控除対象外となるのが原則です。遺体の解剖費用のうち、死体の捜索・運搬に要した費用は控除対象となりますが、その範囲を慎重に確認します。
関係法令・通達
相続税法基本通達13-5(葬式費用として取り扱わない費用)

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